うんち物語Ⅱ ~Story~
2020-03-22
先にプロローグからお読みください。
※スクショには歴戦ジンオウガ亜種4枠クエを消費しています
僅かな臭気
私たちが見逃した僅かな臭気。
これが後に大変な事態を生む
正直、迷える客の
「個室に閉じ籠もる」この行為は
「いつものこと」なので
完全に見逃していた
臭気を辿るとすぐに分かった
うんちである
助言を与えた常連客は後悔している
「自分のせいです」
仮にそうだとしても案ずるな
私が掃除する
ここは私の店だ
事実だけを時系列に掲載
ここで物語とは少し離れ事実だけ時系列に書きます。興味のある方のみお読みください。削除依頼にはいつでも応じます。
2020/03/15(日)夜
Hさんが歴戦ジンオウガ亜種4枠2乙クエを貼りました。
HさんKさんイズナさんの3人でクエ出発。
5分で帰還。イズナさんの2乙。
くっそ!と何度も悔しがるイズナさん。
Hさん「ランス使えば?」
Kさん「ガード性能のせて盾使えば?斧のみで戦うには大変な相手だよ」
(このときの詳しいやりとについては私が現場にいなかったため抜粋のみ。いろいろと議論を交したようです)
イズナさん「剣モード嫌いなんです」
・・・
イズナさん「肉焼きに行ってきます」
一人で探索に籠もりました。
拠点人数は10人を超えてる状態。
その後、イズナさんフリクエのガガチ亜にソロ出発。
一人のハンターが後を追いますが、
その後もずっとガガチ亜を貼り無言で出発するため、その後は誰も参加しなくなりました。
集会所にも顔を出しません。
気になった私は「素材とるの手伝うよ」
イズナさんは「金冠です」
もう一度書きますが、ガガチ亜のフリクエソロです。
当時拠点には新規入会者を含め10人以上。
新規の方に希望を聞くと赤龍に行きたいと。
その後8人になったためイズナさんに声をかけました。
「一緒に赤龍いきませんか?」
イズナさん
「今日は気分悪いので」
「役に立ちませんよ」
「気持ちが乗りません」
「行く気が出ません」
「気力がないです」
あるハンターが
「無理してまで参加しなくていいですよ」
「4・3で行きましょうか」
イズナさん「行きます」
「いや大丈夫、具合悪そうだし」
イズナさん「1撃とかじゃなければ行きます」
そして4・4人で赤龍に出発。
イズナさん1乙。
帰還後、
イズナさん「もう今日はダメです。私が乙らなきゃ1撃いけてましたよね」
「う、うん多分・・・」
イズナさん新規さんに向かって
「なんて名前お読みするんですか?●●●、◆◆◆いやもう▼▼▼でいいや」
・・・
実際の名前は伏せましたが大変失礼です
なお、イズナさんは引き籠もっていたため知りませんが新規さんは自ら「○○と呼んでくださいね」とちゃんと自己紹介しています。
私たちは○○ちゃんとその場で何度も呼び、お話しています。
イズナさん「もう今日はダメダメすぎるし気分が悪いので寝ます」
・・・
「何かあったの?ネガ発言連発なんだけど」
「さぁいつものことだから…」
その夜、イズナさんがツイートでネガ連発しているため、私が少しこう注意しました「全体のことももう少し見てあげて」と。
前兆
私は迷える客にこう伝えた
「お店全体のことももう少し見てくれると助かる」
こんなことは新規客には言わない。
常連客だと思うからのお願いである
世の中には
言葉は通じるが話の通じない者がいる。
その者にやんわり伝えたり、ぼやっと言ったところで理解されない。
出来ないのだ。
その次にはハッキリと分かるように伝えるしかない
しかしハッキリ言うには多大なリスクがある。
多くの場合「お前に言われたくない」と逆ギレされる。
だから思ってても口にしない、これが人間同士の付き合いのルールだ。
人間観察すると分かるが
人に恵まれない人はほぼこれが原因だ。
やんわり言っても分からない、ハッキリ言うとキレられる。
キレられた側の人は離れるし、言っても無駄だと思った人は黙って離れる。
言う方も相手を選んでいる。
喧嘩してでもお互い成長したいと思う人にはとことん付き合う。
だがそんな人こそ素直に聞いてくれるのが現実だ
さきほど人間同士の付き合いのルールと言ったが
ここは私の店だ。
ルールを超えたものがある
礼節と規律である
一人の常連客が見ていられず声をかけたのも、私がそれとなく注意したのも
他者への礼節と規律を無視したからだった
私が注意した直後、
矢のような手紙が届いた
書かれた内容は以下の通りだ。
これが翌日まで続くことになる
DM(ダイレクトメッセージ)
※本人の希望で載せますが削除要求があれば即時消去します
※スクショの結合箇所に画像ズレが一部ありますご了承ください
DMが止んだのは翌日の16:38でした
最後の挨拶
手紙の意味が分かるか?
「自分はうんちが嫌いだがうんちも嫌い」
と言っている
DMが止んだ日の十九時頃
私の店に迷える客が来た。
その時、店には私を含め四人。
迷える客は言った
「お世話になりました。もう来ません、ありがとうございました」
この間、ものの一分も経ってはいない。
顔も出してない、見てもいない。
返事する暇もなく忽然と消えたのだ
事件当日現場にいなかった二人の客は
「え?何?風のように消えたよ。え?」
仕方なく私は簡単に二人の客に事情を説明した
その直後だ。
迷える客は登録されている常連客情報を自ら削除し、常連客同士の連絡網からも情報を削除した。
もう客ではない
そして力を解放された迷える者は暴れに暴れた。場所は公共の面前である
うんちの解放
迷える者は無関係な人にまで投げつけている
当然うんちである
うんちマシンガン、うんちの機銃掃射だ。
その銃口は360度全方向に対応する近代型である。
もはやうんち兵器による無差別テロ。
行き交う人々お構いなしに放たれるそれに弾切れの気配はない。
世界はうんちに震えた…
株価が下がる、歴史に残るうんち大不況である
「うるせーから黙れや、チキン野郎!」
「俺は怒ってるぞ!」
各地で怒号が鳴り響いた
止めどなく全方位に発射され続けるうんち、制御不能なその出口を少しは心配しろ。壊れてからでは遅い
その後、私の店の常連客を攻撃対象とした
うんちライフル狙撃を確認した。
思い返しても信じられない行動だが…
「私の店の常連客」に向けて「私がいかにクソ」なのかを説いてくれているのだ。
確かに私のうんちは特大だ
狙撃対象はさらに及ぶ。
二年以上前に一緒に店を作った店員にまで。それはもはや身内
私は無差別テロにも激怒していたし
常連客へのうんち機銃掃射も同様だが
身内同然の客への狙撃によるダメージを見て決意した
私は大掃除する
古い客は知っているだろう?
店には秘密の地下室がある。武器庫だ。
ありったけの武器を抱え
無言で戻ってきた私の姿を見て声かける客はいなかった
去り際に遂に口を開いた客がいた
「店を、店を守ってます!」
ふン、当たり前だ。
信頼しているから私は一人で戦地に赴ける
「どうか!ご武運を!」
任せておけ、必ず生きて戻る
大掃除も私の仕事だ
うんち大戦争
迷える者が去った日の二十三時過ぎから私は掃除に追われた。
少なく見ても数百人にうんちの被害、影響が出たであろう。
それは朝の五時過ぎまで続いた。
内容は一貫している。
剣が嫌い、斧だけ使いたい。
人に指示をされて傷ついた。
自分は悪くない。
店主と客はクソだ。
店もクソだ。
常連なんぞこっちから辞めてやったわ!
賢明な読者は思い出したであろう、物語のプロローグを。
そう、以前の店でもこいつは同じことをやっている!
特大うんちである
当時、私の店ではこの特大のクソ うんちを快く引き取ったが、恩義を感じる回路が破損しているのだろうか?
いや元々存在していないのであろう。
今度はその臭い物を全世界に向け、無差別にまき散らした。
無関係の人にも投げつけている。
欲しがっても聞かれてもいないのに、だ。
無関係の人からしたらちょっとしたサイコホラーだろう
私は掃除した
主な内容は同じなので反論には苦労しないがとにかくその量がやっかいだ。
誰かしら関係の無い人を見つけては投げつけている。
更には自分の呟きも数分おきに更新している。
こいつ呟き初心者か?
ご存じない方のために解説しておくと
こいつをフォローしている方のところに更新の度に通知が届くのだ。
「あなたの呟きに返信が入りました」といった具合である。
無関係の人が情報収集のために呟き初期画面(タイムライン、TL)を開くとこいつの呟きで埋め尽くされているのである。
なんと迷惑な話だ、誰も余所の揉め事に興味はない
もう一度言おう
私が掃除に入った二十三時過ぎからそれは朝の五時過ぎまで続いた
一部を抜粋する
呟きの嘘の訂正・消去をしたのかと思い「評価」してしまった、恥ずかしい
あとで分かるが
消去したのはこいつが私に送ったDM内容である。
意味不明であった
その後こいつは主張を曲げることなく
私に送りつけたDM内容の公開を求めてくる。
全世界に対しての公開だ。
まったくもって意味不明であった
その意味を聞くと
自分が正しいかどうかを世間の皆さまにジャッジしてもらう、と。
理由はこうだ!………いや聞いたのだが意味が分からなかった…話が通じない
私は意味も理由も無いと拒否するが
この行動を私の弱みだと思ったのか
むしろ開示要求を強めてくる
一部反論を掲載する
何度も書いて申し訳ないがこれが朝の五時まで続くのだ
私も流石に疲れてきて
返信内容も文面も適当になっていく。
奴のうんちエネルギーは底知れずだ
そのエネルギーを瓶に溜めて
盾にチャージしてみろ!と言いたい。
お前の愛してやまない斧も少しは強くなるだろう
また内容を抜粋するが
ほとんど意味はないので読み飛ばしてもらっても構わない
奴は更に強く要求してきた
自身が私に送ったDMの全文公開である。
意味が分からない
誰もそんな内容に興味はない。
私が公開を拒否するのはお前のためだ。
拒否していることを私の弱みと捉えているのか?
頭は大丈夫か?
しかしさすがの奴も疲れてきたようだ。
発言が弱気になっていく
分かってる、知っている
この三ヶ月、心から楽しかったのだろう?
私の店で友人も出来た、居心地も良かっただろう?
本当は戻りたいんだろう?
奴は言う
「今更どの面下げて戻れるって言うんだ!」
どの面だって下げられるさ
「もう戻れる訳がない!」
決めつける前に行動してみろ
判断するのはお前じゃない
うじうじする良い年こいたオッサンに
私はイライラを隠せない
私は「客全員と話をつける」つもりだった
その間、奴は私の返信を読み返していたのであろう。
こんなことを言ってきた
「これ、リツイートしていい?」※原文まま
奴が指摘したのは私のこの返信文だった
この文面は、奴が私に送ったDMの内容の一部を引用したものだ。
事実とは若干異なる。
そのため、私は該当の箇所全文をコピーして送ると言った。
なぜなら奴の手元には文面が残っていない、何故か奴は消去している
奴は意味深に呟く。
人が目の前で豹変する瞬間を見たことがあるだろうか?
私は人生で数度の経験があるが、いつも瞬間に背筋が凍る
「これ、リツイートしていい?」
「面白いことになるぜ」
「てめぇはもう終わりだ」
「覚悟しろよ」
「もう知らねぇからな」
※原文まま
私は約束通りDM内の箇所原文をコピーして送ったが、何故か奴がリツイートしたのは先の引用文であった。
一言加えられている
「皆さん見てください、こいつこんなこと言ったんですよ!」
事実とは若干異なる。
こいつとは、ここでは私のことである。
それから数十分経った頃であろうか?
一人謝罪が始まった
何があったのだろうか?知る由もないが…
フォロワーさんか嫁にでも怒られたのだろうか?
朝の五時を過ぎている、平日である
あまりに突然の変わりように気色悪くなる。
ひとまず反省と謝罪の意思を感じた私は疲れて眠る。
いつ心変わりがあるかも知れないので返信は明日にしよう。
翌日私は返信した
迷える者は約束した
「謝罪に向かわせてくれ」
私は約束した
「謝罪の場と機会は必ず設ける」と
責任を感じて謝罪の意思を示す者がいる。
私には溺れた犬を棒で叩く趣味はない
そう思ったわずか四分後だ!
信じられるか?
やはりこいつは反省などしていない。
この四分間で奴の中で何が起こったのだ?
困惑してたじろぐ私。
こいつぁ普通じゃない!
そのときだ!
赤いネコが彗星のごとく現れた!ニャー!
「ニゲルノ?」
「ニゲルノ?」それは滅びの呪文だった。
次の瞬間、奴は自身の呟き自体を根本から消去し逃亡した。
残されたのは特大かつ大量、そそり立つ山のようだった
もちろん、うんちである
そして翌日、私は迷惑をかけた無関係の人達に謝罪に回る。
優しい言葉を返してくれる方も多く心が救われた。
これにて
うんち大戦争は終結となる
かに見えた…
うんち死すともうんちは死せず
翌日、一人の常連客からうんち復活の知らせを受けた
マジかよ!
嘘だろ嘘と言ってくれ
激しさを増して飛び散るうんちを見て、その客は飯が喉を通らないほど落ち込んでいる。
怒りを通り越す、というのはこのことだ
調べてみると一瞬で見つかった。
あの迷える者だ。
こいつ呟き初心者か?
まただ、偽りと嘘で固めた自己保身。
反省もなく全世界にまき散らし始めた
どこから見ても うんちである
極悪人と自称し「逃走中」の看板を掲げ逃走経路を自ら暴露している。
こいつ呟き初心者か?
そしてまたもや無関係の人達への迷惑行為だ。店主としてまた決意する
私は掃除する
第二次うんち大戦争勃発である
見た人は驚いただろう
「もうこれ以上は語らぬ」
「彼らについて語ることもない」
と言いながら
その無限に続くうんちに
漏らしながらうんちはしない、と言っているのだ。
奴の無限うんち
そこに反省は微塵もない
と同時に私の店からも
奴を擁護する客はいなくなった。
逆に、本気で怒る客が増えた
当然だ、差し伸べた手にうんちされたのだから
第二次うんち大戦争
その後も漏らし続ける奴の後を追うように私は走った。
お気付きだろうか?
依然として全世界に絶賛公開中である
鍵はかかっていない。
どうやらいろいろ間違って知ってしまっているようだ。
人に素直に聞けないのも直っていない。
こいつ呟き初心者か?
奴の言うスパムとは
私が掃除に回ったことを指しているのであろう。
行ったのは、フォロワーさんや迷惑をかけた方々への無言でフォロー、だけである。
気になった方は
DM等で事情を聞いてくるが
気にしない人も多いようだ。
中には怒っている人もいただろうが直接の抗議は一件も来ていない。
呟きとはそういったものだと思う
どうした?急に弱気になって。
立場が悪くなったのか?
こいつ呟き初心者か?
いいから早く謝罪に来い
お前の謝罪する相手はその見知らぬフォロワーさんではない
この先も無限に続くかに見えたうんちだが、途中で私は追うのを止めた
私はもう丸腰である。
武器すら不要と感じていた
大戦争、と書いたが
実のところ争いにすらなっていない
奴はまた知らない人に怒られている、当然だ。
こいつ呟き初心者か?
私はいつしか憐れみの目で見ていた
自分に気に入らないことがあると
他者を批判し自己正当化。
助言に噛み付き、無関係の人への配慮のない言葉の投げ付け。
通用しないと見るや自分だけの世界に引き籠もる。
しかも表玄関を開放しての引き籠もりだ。
一体何がしたいんだ?構って欲しいキッズか?
これではあの夜に私の店で起きたことと全く同じだ。
その前の店で起きたこととも同じだ
何度繰り返すのか?
人生はゲームと違いリセットできないゆえ
いずれは積む
変わらなければならない
その頃、私の店では
怒り心頭の客、腸(はらわた)が煮えくりかえる客、飯が喉を通らなくなる客、など多大な影響が出ていた
私は奴をもう一度観察した
鍵をかけていた。
こいつ呟き初心者か?
次の日もう一度観察してみると
鍵が外れていた。
恐怖からの全面降伏か?
ならばその前にまず謝罪に来い。
こいつ呟き初心者か?
人工肛門になった彼はある程度のうんち制御が出来るようになったかも知れない。
時には器具の力を借りてもいいだろう
しかし出口を一旦緩めると、
自分の意思とは関係なくぽたぽたと永遠にそれは流れいずる
私はそれを見て思った。
まるで
神の雫…
だな
岩が無くても気にするな。
私が掃除してやろう
ここは私の店である
イズナさんへ
それでも私たちはイズナさんの謝罪を待っている。
反省の気持ちは微塵も無いようだが、「謝罪した」という結果だけでも得てもらいたい。
その事実があれば、惨めな生き方も多少はマシになるであろう。
なお、全ての連絡先を消去し逃亡中のイズナさんのためにこの投稿を公開し、コメント欄を使うよう提案する。
コメントした文章は非公開のため、安心して欲しい。
「メンバーと話をつける」と言った私の約束は果たされ、
「謝罪の場と機会は必ず設ける」この約束はいまだ生きている。
コメント投稿が信用できないなら、
ブロック解除しTwitterDMで連絡してきても構わない。
私はイズナさんのアカウントをブロックしたことは無い。
謝罪を受け入れる条件は言うまでもないが
お互いに不利益になるツイートの削除と、今後の関連投稿の禁止及び迷惑をかけたフォロワーさんへの謝罪をするという誓約である。
要望あればこのエントリー(投稿記事)は全て削除し、以後一切貴殿との関わりをしない。
うんち物語Ⅱ ~Epilog~
人は変われると信じている
私は過去、こんな企業研修に参加したことがある
あるホテルに早朝から深夜まで缶詰状態。
それがまるまる四日間続く
参加者は年齢も性別も住まいも職業もバラバラだが明確な目的を持っている
「自分を変えたい克服したい成長したい」
抱えている悩みも人それぞれだ。
仕事のこと、家族のこと、自分自身のこと
参加者は四十名を超えていた
私はその研修の卒業生であることから、その日はアシスタントを任されていた
七名ずつのチームに分かれ
いよいよ過酷な研修がスタートする。
私の担当するチームには
明らかにヤバいのが一人混じっていた。
特大うんちである
自己紹介からもう漏らしているのだ
聞けばこうだ。
自分の生い立ちがいかに不幸であるか。
そのため友人もろくに出来ず
親とも疎遠、仕事もうまくいかず苦難に立たされている、と。
それを変えるために藁をも掴む気持ちでこの研修に参加したのだと
内容だけ聞けば普通である。
この世にごまんと溢れた不幸話だ
問題だったのは
私よりも二回りも年上の女性で
かつ、ビービー泣きながら話すのだ
女性の涙は時として腐ったミカンになる。
私のチーム全員の不幸感は研修冒頭から突き抜けてしまった
ビービー泣いたところで何も変わりはしない。変わらないからまたビービー泣いているんだろ?
得られるのは、事情を知らない薄っぺらな人間関係からくる、これまた薄っぺらい同情と励ましの声だけだ
そしてまたこうだ
「私の気持ちなんて誰も分からない!」
事情を知らない人に言ったところで分かる訳がない
そして周りから人が去った後
またビービー泣くんだろ。
どんな永久機関なんだ
研修も三日目
運営側の講師と
私たちアシスタント
そしてチームの皆で
励まし合い助け合い、
それぞれの自己成長を遂げる
悔しくて泣いたり、優しい言葉に泣いたり
とにかく泣いてばかりの三日間
参加者それぞれが
自分の課題に正面から向き合い挑み、少しずつでも前に進んでいる
人が成長する瞬間は人に感動を与える。
人生のほとんどが他人とのコミュニケーションに費やされるとすれば、他者との交流機会はそれだけ自身の成長につながる。
当然好きな人もいれば嫌いな人もいる。
その混沌が楽しいのだ
いよいよ研修三日目も終盤となるが気に懸かる事があった。
まだあの問題児がビービー泣いている
チームの皆の助言を無視し暴言で返す
そして始まるのだ、いつもの
自分がいかに不幸だったかという自分語りが
三日間の中で一歩も成長しない問題児に、チームの皆も辟易していた。
こう考えていただろう「どうせ研修終わったらこいつとはもう縁がないし」
心の隅で見放されたと感じている問題児は更に大きな声で泣く。
聞こえるが届かない心の叫びだ
三日目最後のプログラム
いよいよ三日目最後のプログラムとなった。
生きるか死ぬか?簡単に言えばそれを疑似体験してもらう
着々と進行するプログラム、
参加者は今までの人生を振り返り、命をかけて二つの選択することになる
二つの選択…
簡単に言うと
一人ずつに命の投票権が二つ渡され、生き残って欲しい命を選ぶことになる
別の言い方をすれば
自分の生死、他人の生死
の選択だ
救難ボートに乗れる人数は限られている
ルールを示された後、
同じ部屋にいる参加者は一切の他者との接触と発言を禁じられる
薄暗い部屋に無言の時間が流れる…
うずくまる者、壁に向かって立っている者、周りを見渡す者
過去の人生、そしてこの三日間を振り返り
たったの二票、この二つの命を参加者四十人の誰に入れるのかを決断しなければならない。
投票する時間は決まっている、今夜だ
ほとんどの人はそのうち一票を自分に入れる選択を考える、当然だ
突然、一人の女性が大声で泣き崩れた。
あれは最近起業したという若い主婦だ。
一人ではもう立ち上がれない
先ほどルールの紹介で
一切の他者との接触と発言を禁じられる、と書いたが一つだけ例外がある。
唯一接触が許されるのがアシスタントたちだ。
チームアシスタント同士はこの時のために
連日深夜まで密に情報交換してきた
しばらくして、泣き崩れた主婦のところに私が駆け寄る。
「二票とも絶対に自分にいれる!絶対に!」
震える声からそう聞き取れた
この主婦は三日間、良くても平均点だった。
四十人のうち、全ての人が生き残れる訳では無い。
条件は明確に示されていなかったが、それが厳しいのは全員分かっている。
得票数順に上位十名なのか?
五票以上獲得した人が生き残れるのか?
まだ分からない、だが見立てとしてはそんなもんだろうと思っている
どんな条件であっても
その主婦は自覚している。
良くて平均点のわたしでは生き残れない、と
どれだけ正しく生きてきても
全員がハッピーエンドとはならない。
命の重さも人によって違うのが現実だ、綺麗事ではない
絶望を前にして
その主婦はたった二票しかない命にしがみついた。
文字通りそれは彼女自身と自宅で帰りを待つ子供との二つの命である
しがみついてもあがいても現実は厳しい。
分かっているが受け入れたくない。
震えて泣き崩れる彼女の心の叫びは参加者四十人全員が聞いた
「わたしは絶対に死ねないんだ!」
堰を切ったように
あちこちで嗚咽が聞こえた
・・・
見渡すと一人の男が壁に向かって頭を抱えている。
他チームのリーダーの男だ
初日から目立っていた男はそこそこ大きな会社の経営者だ。
その風格とリーダーシップから最初にリーダーに他薦された。
私は男に近づく
苦悩している。
チームの皆は自分に投票してくれるだろう、と言う。
傲慢ではない、事実そうなるだろう。
それだけの活躍と影響がこの三日間あった
しかし、責任が重すぎて受け取ることができない、と。
メンバーのことだけでは済まない。
その一人一人の家族のことまで背負うことになるのだ、全てを託されるのだ。
とてもじゃないが背負えきれない、と。
だから、自分以外の人、
別の誰かに投票するようチームの人にはお願いしたいそうだ
「あなたにはその責任を果たすだけの力があるだろう?」
私はそう声をかけた。
しかし出来ないと口にする男の理由は明確で現実的だった。
なるほどリーダーとしての苦悩である
男は責任の重さを誰よりも受け止めていた。
しかし投票しなければならない
人生最後のスピーチ
プログラム開始以降
他者との接触は禁じられたままだが
投票前になり最後の発言権が与えられた
順番も決まっていないし
してもしなくても良い
私の担当するチームに
一人の問題児がいたことを覚えているだろうか。
自分は不幸だとビービー泣きわめくあの特大うんちだ
そこで問題児は誰よりも早く決断をした。
皆の前で堂々とスピーチをする。
「死ぬ」と
こういうことらしい
「わたしが死んでも誰も悲しまないし苦しまない、だから死ぬの。放っておいて」
と
そもそもここに来たのは自身が変わりたいからだろう?
この三日間、私は冷静にアシスタントとして責任を果たしてきたつもりだった
しかしこの時ばかりはキレた!
本気でキレた!
「いつまで悲劇のヒロイン!
演じとんねんっ!!!」
でた!関西弁である。
関東のビジネス業界で関西弁は御法度の場合がある
止まらなかった
「誰もお前に同情せんわっ!」
もう一度言うが、二回りも年上の女性が相手だ。
キレまくって怒鳴った内容はほとんど忘れたが最後にこう叫んだと記憶している
「生きろ!」
結果最悪、死んでもいい、生きようと選択をしろと
その時、顔と顔の距離は20cm
今で言うところの濃厚接触だ
研修中いつもビービーめそめそ泣いてた彼女は、私から目を一切そらすことなく涙を一杯にためながらも無言で必死に堪えていた
絶対に泣かない!泣いてたまるもんか!
彼女の鉄の意思を感じた
年齢や性別、職業や立場
その全てを超えた先で
人間と人間が魂をぶつけ合ったのだ
・・・
それから次々とスピーチする参加者たち
責任を果たすから
投票してくれと懇願する者
自分は学生で若いから
未来があると主張する者
家族を残せない、従業員を残せない、
生き残りたい理由は人それぞれだ。
みんな人生にやり残しがある。
ここで死ぬわけにはいかない
スピーチしない者もいたが
時間は無情にも来てしまう
・・・
さぁ投票時間だ
投票方法はこうだ。
全員が並び、端から一人ずつ投票したい者のところにいきフダを直接預ける
誰が誰に投票するか全て分かる。
自分への投票はそれを皆に宣言する。
二票とも自分に投じても良い
シンプルで残酷だ
他者との接触が解禁された。
投票する相手へ想いを伝えることが出来る。
しかし、フダを渡す際の数分だけしかない
命を受け取れない人が泣いている
命を受け取った人も泣いている
そして
生き残る人と
死ぬ人が決まった…
その夜…
三人を残し
みんな死んだ…
・・・
研修、三日目が終わった
私は叫んだことを反省したが後悔はない。
しかし一抹の不安があった
あの問題児だ
私が感じた彼女の鉄の意思は果たして
いきなり怒鳴られてムカついただけなのか
変わると決めたからなのか
その時点では分からなかったからだ
研修最終日
四日目の朝
私は逃げ出したいほどの不安にかられていた。歯を食いしばり責任を果たすために会場に入る
当然会場にいる。あの問題児だ
しかし
いたのはまるで別人のような彼女だった
研修の最終局面、
彼女は堂々と課題をこなす。
それを見たチームの皆は拍手しながら全員泣いていた
見事だった
完璧に課題をこなしたのだ
後ろで見ていた私に
代表講師の先生の一人が肩をポンと叩いて言った
「やりましたね!」
違う。やったのは彼女自身だ。
あなたは私を泣かせようとしているだけだろ?
研修後に挨拶にやってきた彼女の笑顔と感謝の言葉は一生忘れないだろう
いくつか報告もあった。
不幸の原因の一つとなったという家族と和解したというのだ。
これには驚いた
なぜならまだ研修四日目が終わった直後だからである。
一体いつの間に?
驚いて辺りを見回すと
彼女と同じチームのリーダーだった男が私に向かってサムズアップしている
後ろでチームメンバーのニヤけた顔が見える
何か出来るとしても
昨夜から今朝の間しか彼らに時間は無かったハズだ。
現実的に考えてみても、、、
いや、事実やりきったのだろう。これがチームの力か
なるほど皆の顔をよく見ると
チーム全員に目の下のクマが見える。
私はニヤけた顔でリーダーにサインを送り返してその場を離れた
人は変われる、それも瞬時にだ
私の掃除がしつこいのはそのためだ。
神の雫が落ちるなら
私が掃除してやろう
ここは私の店だ
(うんち物語Ⅱ 未完)
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